ta-fujitan’s diary

映画、読書など感想

ほんまにオレはアホやろか / 水木しげる著

表紙

水木しげるの自伝はハズレがない。戦争体験記も非常に面白く胸をうたれるのでオススメするが、今回はこの本を紹介したい。

水木しげるは妖怪の世界を皮膚感覚で感じているスピリチュアルなところのある作家である。特に少年時代のその感性の面白さがすごく精確に瑞々しく描写されているのが見どころなので是非読んでもらいたい。(私は童年時代の描写に弱い、なんだか泣けてくる)

水木しげるは人生の岐路での自分の様子をふりかえり、表題にあるとおり”ほんまにオレはアホやろか”といった自分のことながらやれやれだぜ的な調子で淡々と当時の感情や人生観をすごく精妙に説明してくれる。この本にはそういった水木しげるの職業の進路体験談本という雰囲気がある。

水木少年は進学もできず、就職もできなかったりした際にも、自分の境遇に焦ることなく(悩んだり考えることすらなく)毎日のように虫を観察したり、絵を描いたりして過ごしていた。その堂々たる様子に私は感服してしまった。その神経の鈍さは尋常ではなく独特の宗教観も手伝って誰がどうやっても水木少年を動かすはできなかったと思う。(水木しげるは働くのを拒絶するのではない。何度か就職したさきでは一応彼なりに働くが、その言動からクビになってしまう。)

社会から完全に逸脱した様はロックやパンクを感じさせる。水木しげるは愛すべき逸脱者である。

周りからみるとすごくのんびり生活しているように見えるが、実際のところ虫の観察や絵描きで働いていなくても毎日毎日大忙しだったらしい。その様子には両親も半ば諦めているようである。

そんな感じの本である。今の精神医学からいわせれば簡単に診断名がつくような症状をありありと示している水木しげるだが、むしろ彼からいわせると大多数の日本人の在り方がむしろおかしいのである。私もそう思う。

毎日満員電車に揺られているサラリーマンはこれを読んで人生観を改めるといいかもしれない。私はかなり強く共感するものがあった。ADHDだからというのもある。